インタビュー花咲くいろは

花咲くいろはスペシャルインタビュー第37回

――井上さんが色彩設計を目指されたのはいつ頃でしょうか?

井上:
アニメを作る仕事がしたいと思ったのは高校生2年生の頃です。小さい頃から塗り絵は好きでしたが、絵を描き始めたのは高校生になってからで、それまでマンガやアニメともあまり接していなかったんですよ。

――そうだったんですか!?  ではなぜアニメ制作に関わる仕事をしようと思われたのですか?

井上:
高校生になって美術部に入ったんですが、そこで知り合った友人たちがすごいアニメが好きで(笑)。徐々に私も感化されて、2年生になる頃には「私もアニメーションを作りたい!」と思うようになっていたんです。それでアニメーション科がある専門学校に進学しました。

――それからアニメ制作会社に入られたんですね。

井上:
はい。試験を受けて入りました。でも初めは色指定、色彩設計ではなく、仕上げの作業のお手伝いからスタートしました。その当時は、本当にやっていけるんだろうか?  という不安もありました。でもたまたま『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の試写を見る機会があったのですが、こんな実写のようなアニメが作れるんだ!  何てすごい作品なんだ!!  と衝撃を受けまして(笑)。それからこの仕事を続けていこうと心に決めたんです。その後会社から撮影か色指定(色彩設計)のどちらかの仕事をしませんか?  と言われて色彩設計に進もうと。そこがスタートですね。

――ちなみに小さい頃になりたかった職業は何ですか?

井上:
お花屋さんです。今でも隙あらばお花屋さんになりたいと思っています(笑)。すごく花が好きなんですよ。

――井上さんは色彩設計としてどういう勉強をされてきたのでしょうか?

井上:
色指定、色彩設計を目指される方は女性が多いと思うんですけれども、まずは服飾から入るといいかもしれません。例えばアニメを見ていても、このキャラクターにはどんな服装が似合うだろうかと自分なりのコーディネートを考えてみたり、いろいろと想像してみたりする。それでキャラクターに厚みがでるのか、それとも印象が違ってしまうのか作品を見ながら検討する。そうすることでキャラクターのイメージが作りやすくなるんです。もちろんそれが映画でもいいし、テレビドラマでもいい。誰かが作ったモノを持ってくるのではなく、自分の感じるもの、自分の世界観を研究するということが大切だと思います。

――常にそういう目線で作品を見られているのでしょうか?

井上:
そうですね。だから映画やテレビなどを楽しんで見られないんです。このキャラクターには、こういう色合いの服が似合うんじゃないかなど考えてしまう。一種の職業病ですね。あとは美術館に行くのも勉強になります。古い色使いだからこそ伝わってくることもあるし、彫刻でも光の反射の勉強になりますし、研究する材料は身の回りにいっぱいあるんです。その中で自分の個性ってなんだろうと掘り下げていくことが、自分の個性、色を出しやすいのかなと。

――仕事で溜まったストレスなどはどうやって解消されているのですか?

井上:
アイドルのライブ行くことです(笑)。仕事をしている時間が長いですし、先ほどのような職業病なところもあるので、プライベートでもつい仕事に結び付けてしまうんです。でもライブはそういうことから開放されて、まったく仕事のことを考えずに楽しめるんです。それにエネルギーも貰えますからね。あとは……実は釣りなどアウトドアなこともしてみたいと思うのですが、実際にやろうとすると大変だし、体力が必要なので敬遠してしまうんです。

――ちなみに井上さんご自身を色に例えると?

井上:
アプリコット系かな。好みの色で言うと、黄色などの明るい色、紫のような寒色系も好きなので両極端なのですが……。やっぱり私が色彩設計する作品に黄色が多くなってしまうのは、自分の個性なんだと思います(笑)

――では安藤監督を色で現わすと?

井上:
黄色ですね。監督自身も黄色が好きなのは確かだと思うんですけれども、太陽のような雰囲気を感じるんです。いつも元気で、仕事に対して真っ直ぐに向かわれているところとか。向日葵のようなイメージです(笑)。

――では最後に井上さんにとって『花咲くいろは』はどんな作品でしょうか?

井上:
現実のようなファンタジーのような、すぐそこにいそうでいないような、そんなリアルとアニメを上手くミックスしたような作品だと感じています。湯乃鷺という街があり喜翆荘という旅館がある。そこには緒花たちが一生懸命働いていて、いつでも会いに行くことができる。それぐらい身近に感じられる作品はあまりないと思うんです。自分もこんな素敵な作品に関わることができて、とても光栄ですね。