インタビュー花咲くいろは

花咲くいろはスペシャルインタビュー第29回

――曲を作られるまえにシナリオを読まれるとのことでしたが、シーンを思い浮かべながら作曲されるのでしょうか?

浜口:
キャラクター設定や美術設定など、いただいた素材である程度想像はするんですけれど、実際の映像を見て「ああ、こうだったか」と思うことが多いですね(笑)。ただキャラクターの声を聞いていれば、脚本にあるセリフも声優さんの声で再生されますからイメージが湧きやすいですね。
あとはそのシーンのためだけに書いた曲もいくつかあるんです。例えば3話で次郎丸が岩の上に立っているシーンとか、7話でサバゲーマーの人たちが登場するシーンなどですね。特に7話は「ここだけは、今までのイメージとは違ってもいいです」と言われていたので、いろいろな楽器を使って作りました。

――では曲のイメージと一番あったと思われるシーンはどこでしょうか?

浜口:
たくさんあるので、これと言うのは難しいですが……。『花咲くいろは』の曲で気に入っているのは、M53という曲。5話で徹を連れ戻しに緒花が福屋旅館に行くシーンなどで流れたりしているのですが、自分でいいシーンだなと思うときに流れることが多いんです。
あと自分が作った曲ではないのですが、オープニング、エンディングも好きでなんですよ。曲がいいのはもちろん、映像が曲の盛り上がりにとてもあっていて見ていて気持ちいいし、そのあわせ方もキャラクターの影であわせたり、雑巾がけをしている跡であわせたりなど今までにない感じがしました。

――ちなみに好きなキャラクター誰ですか?

浜口:
全員がとても魅力的で……これも難しい質問ですね(笑)。誰かひとりと言えば民子かな。彼女は未だにツンケンしていますけれど、だんだんと緒花に対して心を開いていく。あるエピソードで一気に距離が縮まるのではなく、さまざまなことがあり、少しずつジワジワと関係が深まっていくところが、見ていて惹き込まれました。『花咲くいろは』は、キャラクターの気持ちの移り変わりを繊細に描いている部分、グラデーションが素晴らしいなと思います。印象的なセリフやシーンも、1話にひとつ以上必ず出てきますしね。

――『花咲くいろは』のテーマのひとつが“お仕事”ですが小さい頃なりたかった職業はなんでしょうか。

浜口:
小さい頃は無責任にいろいろな仕事がしてみたいと思っていましたが、実際に将来を見据えて考えたのは中学生の頃で、棋士になりたいと思っていました。その頃はかなり本気で目指していて、街の将棋クラブにも毎週通っていたんですよ。当時アマチュアでしたが三段ぐらいでした。今考えると、とてもプロになれる器ではなかったので目指さなくてよかったなと(笑)。最近また始めたのですが、もし将棋を題材とした作品があれば、ぜひ音楽を担当してみたいです。

――作曲家を目指されたのはいつぐらいでしょうか?

浜口:
実は結構遅くて、高校2年生の頃ですね。そこから音楽学部のある大学に入るための勉強を始めて、どうにか間に合ったという感じです。ただ勉強を始めた頃は、今のような仕事をするとは思っていませんでした。音楽自体をやり始めたのは小学2、3年生の頃。ピアノがやりたくて両親に無理を言って買ってもらいました。

――ご自身でピアノをやりたいと。

浜口:
そうだったと思います。きっかけは忘れてしまいましたけど、無理やり習わされたわけではなくて、自分からやりたいと言い出しました。両親が音楽家ということでもないんですが。あとは高校時代に吹奏楽部に入ってコントラバスを弾いていました。コントラバスは今でも趣味程度にやっています。
親としては音楽家を目指すのはいいけれど、もう少し安定した職業に就いてほしいなと思っていたかもしれません。まあ将棋のプロを目指すと言っても同じように思われたと思いますが(笑)。