インタビュー花咲くいろは

花咲くいろはスペシャルインタビュー第28回

――まずは浜口さんが『花咲くいろは』に参加されることになった経緯をお聞かせください。

浜口:
今回のお仕事はランティスさん経由だったのですが、ピーエーワークスの堀川さんから私を指名していただいたとお聞きしました。

堀川:
音楽的な知識は無いので個人的な印象になりますが、浜口さんが作られる曲は爽やかな青春モノに合うイメージなんです。主旋律のメロディーがとても綺麗で、重厚かつ上品。過去に携わられた作品の劇伴(映画やテレビなどの伴奏音楽のこと)がとても素晴らしく、繰り返し聴いていました。それで今回ぜひとも浜口さんに『花咲くいろは』の音楽をとお願いしたんです。
実際に上がってきた劇判はやはり上品で、これが日本の山間の小さな温泉街を舞台にした作品に合うだろうかとドキドキもしましたが、映像に曲をのせてみたら背景の美しさと相まって、グッと作品を引き立ててくれました。

――具体的にはどんなオーダーがあったのでしょう?

浜口:
1回目の打ち合わせのときは、PV第4弾で使われていたnano.RIPEさんの『夢路』がありましたので、全体的にそれにあわせたようなサウンドということでした。その中で堀川さんが言われていたことは、音をあまり重ねずにシンプルな構成でということ。そのイメージを基に2、3曲作ってさらにイメージをすり合わせていったのですが、自分が思っていたよりも小編成を求められていて、ここまでシンプルな劇伴は今までやったことがなかったですね。自分にとっても新しいチャレンジでした。

――今回はどのぐらい曲を作られたのですか?

浜口:
約60曲ぐらいです。2クールの作品としては多くもなく少なくもなく、普通の分量だと思います。ただ先ほども言ったように、60曲もあるといろいろな楽器を使いたくなるんですよ。そのほうが違いも出せるし、バリエーションもたくさん作れますから。でも『花咲くいろは』はギターとピアノが中心。それで何十曲も作るというのは大変でした。ただ逆にギターだけを使ってここまで出来るんだという発見もあり、曲を作っていて面白く感じることも多かったですね。

――実際に楽曲が入った映像を見られていかがでしたか?

浜口:
実際に完成されたアニメーションを見て、堀川さんから「あまり音を重ねずなるべくシンプルに。ギターのみのサウンドでもいいです」と言われた意味が分かりました。当初は、本当にこの薄い編成で2クールいけるのかな? とちょっと不安な部分もあったのですが、映像にある空気感みたいなものが、そういう音を欲しているんだなと思いました。

――その中でも印象的な話数はどこでしょう。

浜口:
楽曲を作る前に脚本を読ませてもらったのですが、最終話まで先が気になってしかたがなかったという感じです(笑)。どの話数も魅力的で、とても楽しかったのですが、その中でも修学旅行の回(14、15話)が印象に残っています。実は大学生の頃、甲府(山梨県)にある温泉旅館で2年間ぐらいアルバイトをしていたことがあるんですよ。働いていたのは宿泊ではなく宴会のほうなんですが、板場などの裏方の描写が忠実で「ああ、こうだった」なと、その頃の思い出が蘇ってきました。

――作曲はご自宅でされているのですか?

浜口:
基本的に自宅ですね。スタジオで作る方もいらっしゃいますが、自分ではいろいろ気になって集中できないのと、作っているところは誰にも見られたくない(笑)。完全にひとりで篭ります。ただあまり集中力がないので、何十時間も続けて作業はできないんですけれども、1日に12、3時間ぐらい仕事をしています。
基本はキーボードでイメージを作りつつ、パソコンで肉付けをしていく感じですが、今回は打ち込みという作業があまりなかったので、キーボードがメインでした。

――曲作りで煮詰まることもあると思うのですが、そんなときの気分転換はどんなことをされていますか?

浜口:
運動をすることかな。特に曲作りで篭るときほど、フィットネスクラブに行くようにしています。自宅で作業をしていると、ON、OFFの境目が無くなってくるんですが、そんなときジムに行くと気分転換になる。あと今日はジムに行くからこの仕事はこの時間までに終わらそうと決めると、集中できることが多く、効率もあがるんです。
実は気分転換が下手で、以前は仕事がひと段落するまで何もしなかったんですよ。でもそうやって仕事をしていると、終わったとき本当にひどいことになって……。肉体的な疲れもありますが、精神的に参ってしまって、2、3週間抜け殻のようになってしまうんです。今はあまり無理をせず、3食決まった時間に食べて、睡眠も必ずとるようにしています。夕方1時間ぐらい仮眠をするのが日課になっていますね(笑)。