劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME

サプライズが盛りだくさん!?
「第三回 湯涌ぼんぼり祭り」レポート

取材・文・写真 豊田 直顕

■あいにくの空模様にも関わらず、多くのファンが訪れた湯涌温泉
2013年10月12日、土曜日。石川県金沢市湯涌温泉街で「第三回 湯涌ぼんぼり祭り」が開催されました。
当日は、時折激しい雨が降るなど安定しないお天気になりましたが、それでも早朝から多くのファンが
湯涌温泉を訪れ、作品の舞台となった街並みを散策したり、先行販売された
「劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME」のブルーレイやメモリアルブックなどのグッズなどを
購入したり、TVシリーズに登場したオムライスを食べたりと、思い思いに楽しむ姿が見られました。
13時過ぎからは遊学館高等学校吹奏楽部によるマーチングバンドのパレードや、
金沢市の「フェスティーボ ウインド・アンサンブル」、金沢大学アカペラサークル所属の
「はい×から」など、地域の皆様によるステージイベントも開催。あいにくの雨のため、残念ながら
演奏は一部ではありましたが、多くのファンが詰めかけ、素晴らしい演奏、行進を見守っていました。
喜翆荘ウィンドブレーカー

■太陽も顔をのぞかせたnano.RIPEライブ
14時30分からは、湯涌芝原小中学校体育館において、「花いろ旅館組合」による応援イベントのひとつ、
「nano.RIPEライブ@湯涌ぼんぼり祭り」が開幕。直前まで降っていた雨もやみ、
「劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME」の主題歌『影踏み』からスタートしたライブは、
『月影とブランコ』『ツマビクヒトリ』と3曲を立て続けに披露。
透き通るような歌声と力強いサウンドは会場を一気にnano.RIPE色にするとともに、湯涌温泉上空を
覆っていた雨雲を吹き飛ばし、体育館の窓からは太陽の光が差し込んできました。
きみコさん(Vo&G.)の「金沢に帰ってまいりました! ただいまー!!」という挨拶に会場も
大きな声援と拍手で応え、さらに客席からは「誕生日おめでとー!」という声も。
実は青山友樹さん(Dr.)は、ぼんぼり祭り当日が誕生日でした。
ライブでは『面影ワープ』や『リアルワールド』、10月30日にリリースされる新曲『なないろびより』
(Fullバージョン初披露!)などが演奏され、拳を突き上げる人、タオルを回す人、ジャンプする人など
会場のボルテージも最高潮に。
そして「今日限りの新しいnano.RIPEをお見せしようかと思います」というきみコさんのかけ声と
ともに、TVシリーズ第2クールのエンディング主題歌 『はなさくいろは』を担当したクラムボンの
ミトさん(Ba、etc.)がステージに登場! このサプライズに客席からは大きなどよめきと歓声が起こっていました。 「ファン代表として来ました」(ミトさん)
「まさかミトさんのベースで歌が歌える日が来るとは思っていなかったです」(きみコさん)
そして、ミトさんはアベノブユキさん(Ba.)からベースを受け取り、アベさんはササキジュンさん(G.)が一番長く使っているというギターを手に。
そしてきみコさんは、ヴォーカルに専念するという構成で、「mito.RIPE」(きみコさん命名)湯涌特別バージョンの『ハナノイロ』を会場全員で熱唱。1曲限りのスペシャルステージはファンの方々にとっても
、nano.RIPE、ミトさんにとっても忘れられない時間になったのではないでしょうか。
そして大きな拍手に迎えられたアンコールは、ファンにはおなじみの『夢路』。
あっという間の1時間、全11曲が披露された濃密なnano.RIPEライブは幕を閉じました。

(「nano.RIPEライブ@湯涌ぼんぼり祭り」 セットリスト)

『影踏み』
『月影とブランコ』
『ツマビクヒトリ』
『面影ワープ』
『ノクチルカ』
『リアルワールド』
『パトリシア』
『なないろびより』
『もしもの話』
『ハナノイロ』

アンコール
『夢路』

■ここでもサプライズが!
 まさかの司会でスタートしたキャストトークショー

日が傾いてきた16時30分からは、湯涌芝原小中学校体育館にてキャストトークショーが、
また湯涌稲荷神社の扇階段ではスタッフトークショーが開催されました。

「花いろ旅館組合」応援イベントとして行われた、「『花いろ』キャストトークショー」の舞台に
まず登場したのは、なんと「花いろ」のキャラクター原案を務めた岸田メルさん。

「実はプライベートでぼんぼり祭りに参加するということをTwitterでつぶやいたところ、
プロデュースの永谷さんから何かやってと言われて、引き受けました(笑)」

ということで、キャストトークショーの司会を務めることに。
このサプライズにはファンの皆さんも驚いた様子。
まずは岸田さんの挨拶から、松前緒花役の伊藤かな恵さん、鶴来民子役の小見川千明さん、
輪島巴役の能登麻美子さんがステージに登場。主にフリートークで進行したステージは、
劇場版の話題が中心となり、

「気負わずに、TVシリーズの延長線上で演じられました。“ただいま”と帰ってきて
『花咲くいろは』の日常を過ごすことができました」(小見川さん)

「緒花に加えて若い頃の皐月も演じるということで、セリフの量が多くて大変でしたが、それ以上に
いろいろなシーンに感動しました。特に後半、屋上で菜子と麻奈のやりとりを見守るシーンでは、
演じながら“菜子頑張ったよ”と、アフレコ中に本当に泣きそうになりました」(伊藤さん)

「皐月さんが赤ちゃん緒花を抱いて走るシーンが大好きです。また民子ちゃんが食べる人たちのことを
もっと考えなきゃ、と気付くシーンは、分かる! って。あそこは本当にいいシーンだと思います」(能登さん)

など、それぞれの感想やお気に入りシーンなどについてトークを展開。
そして緒花の父親である綾人に話題が移ると、

「影があって包容力がある、若い頃の皐月が好きそうな男性をイメージして描きました」(岸田さん)

「ミステリアスな雰囲気ですが、すごく優しそう。あと、皐月と綾人のキスシーンはちょっと
恥ずかしかったですね(笑)」(伊藤さん)

また、巴の「バカタレが!」というセリフは、能登さんのアドリブだったこと、夜中に民子の叫びを
聞いてもそのまま家に帰ってしまう徹に、女性キャストから「戻らないの!?」とツッコミが
入ったことなど、アフレコの裏話も飛び出し、集まった大勢のファンは、
普段は聞けないキャストさんたちのトークに聞き入っていました。
そしてイベントも後半戦に差し掛かったところで、スペシャルゲストとして、
「nano.RIPEライブ」にも出演したクラムボンのミトさんが登壇!

大きな拍手とともに迎えられたミトさんは、一般のお客さんに交じって劇場版の舞台挨拶を普通に
見に行ったこと、一番感動したシーンは、菜子が電話で母親のことを「お母さん」と呼んだ
シーンだったなど、プライベートでも本当に『花咲くいろは』の大ファンらしいコメントが
次から次へと飛び出し、会場からはコメントのたびに歓声が湧き上がっていました。
そして毎年恒例の、「のぞみ札」にどんな願いを書くか? という質問では、
ミトさんから「ここまでファンに愛されている作品なので、ぜひ続きを期待したいです」という
コメントも。それを受け、司会の岸田さんからは「これからも『花咲くいろは』を描き続けていきます!
できれば版権として描きたいです!!」という発言もあり、会場からは大きな拍手が送られていました。
喜翆荘ウィンドブレーカー

一方、同時刻に扇階段で行われたスタッフトークショーにも、あいにくの雨にもかかわらず
多くのファンが詰めかけ、プロデュースを担当した永谷敬之さんが司会進行役となり、安藤真裕監督、
プロデューサー・ピーエーワークス代表取締役の堀川憲司さん、そしてこちらもサプライズゲストとして
脚本を担当した岡田磨里さんが登壇。こちらでは訪れたファンからお題を受け付け、
それに答えていくという形式でトークが進行していきました。

劇場版でこだわった部分、印象深いシーン、そして続きはあるのか、についての質問には、
「監督をはじめ、スタッフ皆がそう思っていると思うんですけれど、テレビシリーズ、
劇場版とステップを踏んで、今は「やり切った」感でいっぱい。続きを作るかについては、
もう1回やりたいな、という気持ちが高まっていくのを待ちます。もしくは新しいスタッフで、
次の世代の『花咲くいろは』を作ってくれるのならば、観てみたいですね」(堀川さん)

「映画は、映画館に行ってチケットを買って観てもらうものだから、『花咲くいろは』のファンの方が満足するようなフィルムにしたいと思っていました。だから時間は短くても新作映像にこだわりたかった。また『花咲くいろは』のいいところをギュッと詰め込んだ、観てくれた人が『花咲くいろは』を

好きでよかった、と思ってもらえるようなフィルムを目指しました」(安藤監督)

「特に印象に残っているのは、皐月が病院で緒花を抱き、綾人と一緒に写真を撮るシーンから
ラストまで 。最後の、皐月が走り出すシーンのセリフは、書きながら泣いしまいました。
ここまで号泣しながら書いたのは久しぶりで、私も走り出さないといけないんだ、と、
その時の自分の気持ちに突き刺さったんだと思います」(岡田さん)

その他、「北陸新幹線のCMに『花咲くいろは』のキャラクターを起用したいと思いますか?」など、
『花いろ』ファンならではの質問も飛び出し、会場を沸かせていました。


■アニメが架け橋に。
 南砺市市長も駆けつけた「第三回ぼんぼり祭り」

20時からの「神迎え行列」の直前、湯涌稲荷神社の扇階段では、アニメによる自治体広域連携の
一環として、金沢市の隣町、富山県南砺市にまつわる作品として、TVアニメ「true tears」や、
南砺市限定オリジナルショートアニメ「恋旅~True Tours Nanto~」の映像が流れ、
さらに「true tears」に登場する“麦端踊り”のモデルになった“麦や節”、
「恋旅~True Tours Nanto~」に登場した“こきりこ節”ほかが、
南砺市伝統芸能保存グループ五箇山民謡清流会の皆さんによって披露されました。
夜の湯涌温泉に響き渡る演奏と歌声、数多くのぼんぼりに囲まれたステージで実演される
素晴らしい踊りに、集まった大勢のファンも魅入っていました。


温泉街に聞き慣れた『ぼんぼり夜』の音楽が流れはじめると、心配された雨もあがり、
いよいよ「ぼんぼり祭り巡行」が開始。
「ぼんぼり祭り」は、もともとTVシリーズ『花咲くいろは』の中に架空の神事として登場したお祭りで、
神無月(かんなづき)に小さな女の子の神様が出雲に帰る時の道しるべとして、のぞみ(願いごと)を
書いた札を下げた“ぼんぼり”で送り出す、という設定でした。それが3年前、湯涌温泉観光協会さんからの
お申し出により、温泉街の水害復興3周年記念として本物のお祭りとして開催されることになり、
作中の設定と同じく、神送の儀やのぞみ札のお焚き上げが行なわれたのでした。

まずは玉泉工房付近から、大きなぼんぼりを先頭に行列がスタート。
途中、かごに“のぞみ札”を入れるファンも多く、行列はゆっくりと歩を進め、扇階段前に到着。
扇階段のステージでは、湯涌温泉観光協会の安藤精孝会長、山野之義金沢市長の挨拶があり、
「来年も開催したいと」いう発言も飛び出しました。また今年は、隣接する田中幹夫南砺市市長も
駆けつけ、「アニメによる観光連携を一緒にやって、もっと強い絆で盛り上げていきたい」
と挨拶をされ、集まった大勢のファンから拍手と歓声があがっていました。


その後は、湯涌稲荷神社での神事に。来場者は会場に設置されたスクリーンで神事の様子を見守ります。
そして神事が終わると、湯涌稲荷神社からぼんぼりと共に女の子の神様が降りてきて、
“神送りの儀”へと移ります。


湯涌稲荷神社から再スタートした行列は、ぼんぼりに照らされて幻想的な玉泉湖を、
ぐるりと一周します。そして、湖畔の浮きステージに到着すると、湯涌稲荷神社の神主さんによる
祝詞の奏上の後、「のぞみ札」が入ったかごが焚き上げられ、その大きく燃えあがる火柱は、
多くの人たちの願いが、天に向かって届けられているように見えました。


こうして全ての行事を終え、「第三回湯涌ぼんぼり祭り」は幕を閉じました。湯涌温泉観光協会では、
アニメから生まれた「湯涌ぼんぼり祭り」が、湯涌の伝統文化へと定着して新しい「湯涌温泉」の
魅力を紡ぐべく、伝統芸能や地元の有志による演奏など、幅広い方たちに楽しんでもらえるような
お祭りを目指して、今後も開催していくとのこと。帰路につく来場者からも、来年も絶対に来よう、
という声があがっていました。