――『花咲くいろは』でお気に入りの話数、シーンを教えてください。
斎藤:
最初に「おお!」と思ったのは、1話で緒花の乗った電車がトンネルを抜けるところです。一生懸命音楽を合わせたシーンというのもあるのですが、音楽とカットがシンクロして印象的なシーンだなと。3話で次郎丸が追い詰められて海に飛び込むまでの一連の流れや、16、17話の映画の撮影のくだりも好きです。16、17話は喜翆荘で働く面々の気持ちが、ひとつにまとまっていったように感じました。でもどこかひとつを挙げるとなると、最終話でスイが誰もいなくなった喜翆荘を静かに回るシーンですね。扉を開けると賑やかだった頃が思い出され、消えていく。でも皆がいなくなったと思ったら緒花がひとり雑巾がけをしていて……。あのシーンはホロリときました。
――そういえばドラマCDの企画段階で、スイを強く推していらっしゃいましたが……。
斎藤:
それは僕がスイに共感できる部分が多いからなんです。僕も社内で立場が上がってきて、部下たちも増えてきたのですが、仕事を教えるということが本当に難しい。特に叱ることほど面倒なことはないと思います。一番楽なのは何も言わず無視することなのですが、そうすると成長も止まってしまう。時には叱り続けなければいけないと思うんです。スイは、他人はもちろん自分に対してもいつも厳しく、その分とてもエネルギーを使っているんだろうなと。
――スイはご自身に似ていると。
斎藤:
そこまで言うとおこがましいのですが……。あとはスイみたいになりたいという想いもどこかにあるのかもしれません。僕は「気遣いが大切」と言いながら、どこか自分に対しての甘さもある。また「ここまで厳しく言ったら嫌われてしまうんじゃないか?」という気持ちもあって、言い切れないこともあるんです。
――やはり社内では厳しい一面もあるのですね。
斎藤:
もちろん。ただその人の性格によって少し接し方を変えている部分もあります。褒めると頑張る人には褒めたおしますから(笑)。でもスイは誰にかまわず厳しく接していますし、考え方がブレることもない。それでも全員がまた喜翆荘で働きたいという気持ちになるんですから、スイがやってきたことは間違っていなかったんだなと。憧れの存在ですね。
――いつも忙しくされている斎藤さんですが、ストレス解消のために何かされていますか?
斎藤:
よく聞かれるんですが、好きなことを仕事にしてしまっているので逃げ道がないんですよ。仕事のストレスを仕事で解消しているところもあって、いつも回っている感じです。仕事が好きなんですよ。でも年に1回ある夏休みでの家族サービスは、思いっきり楽しむようにしています。
――ご結婚されているんですよね。そう言えば奥様の名言がありました。
斎藤:
「仕事なんていくらやっても終わりがないんだから、きりのいい所で止めなさい。仕事をしないからといって明日死ぬわけじゃないんだから」というヤツですね(笑)。僕がよく「仕事が終わるまで待ってて」と言うのですが、それに対しての発言です。確かに土日も僕は仕事でライブやイベントに行くことも多いので、奥さんに「私は暇でツマンナイ」と言われることもあります(笑)
――そうだったんですか。ぜひこれからも夏休みの家族サービス頑張ってください。では話を『花咲くいろは』に戻して……。10月9日に作品から生まれた「湯涌ぼんぼり祭り」があり、斎藤さんも参加されていましたが、いかがでしたか?
斎藤:
自分が関わったとは思えないぐらい大きなお祭りになっていて、一ファンとして楽しませてもらいました。のぞみ札のお炊き上げも神秘的で、ぜひ来年以降も続けてもらいたいです。
――ちなみに、のぞみ札には何と書かれたのですか?
斎藤:
すごく現実的なのですが、「即戦力募集!」と書きました(笑)。優秀な社員が欲しいなと。今は、もっといろいろなことを書けばよかったと反省しています。CDの売り上げ以外に、大きな収入が得られるような仕事が見つかりますようにとか(笑)
――それは現在の音楽業界のテーマでもありますよね。
斎藤:
そうなんです。昔と比べてCDの売り上げ落ちていますが、逆に音楽を聴かれる機会は多くなっている。そこで何かできないかと。それが実現すればこの業界も安定すると思います。やはりお金がなければ人材も育ちませんし、夢も見られないと思うんですよ。野球選手やサッカー選手は頑張って成功すればそれに対しての見返りもある。それって仕事をする上で大切なことだと思うんです。そこを目指すということは、モチベーションにもなりますから、いい意味でお金は大切だと思います。
――それでは斎藤さんの最終目標は?
斎藤:
うちの社長のようになりたいかな。どこに行っても「こんにちは」と笑顔で受け入れられるし、営業力もあって、自分のやりたいこともやれている。すごく羨ましくもあり目標です。
――今でもそうだと思うのですか……。
斎藤:
いや、まだまだです。今は大きなことも小さなことも全部やっているので、気持ちが広く持ててないかなと。今後は長く大きなスパンの仕事をメインにしていきたいと思っていて、現場のことは若い世代にバトンタッチしていきたいですし、そろそろそういう年齢になってきたのかなと思っています。
――最後にファンの皆さんにメッセージをお願い致します。
斎藤:
もう「これまで応援してくださってありがとうございます!」のひと言に尽きます。ファンの方の応援がとても温かくて、それが現場や音楽制作にも反映されて、とてもいい相乗効果になったと思います。「湯涌ぼんぼり祭り」で、新作映像の発表もありましたから、これまで応援してくださったファンの方をガッカリさせないよう、これからもいい音楽、いい作品を作っていきたいです