インタビュー花咲くいろは

花咲くいろはスペシャルインタビュー第24回

――『花咲くいろは』では、喜翆荘の仲居頭である輪島巴を演じられていてる能登さんですが、ご自身と巴で似ていると感じる部分はありますか?

能登:
7話で巴の自室のシーンがありましたが、「疲れたー」とベッドに倒れこむところや料理をしながら足でふくらはぎをかくところなど、まんま私かもしれないと思いました(笑)。さすがに缶ビールをプシュッとまではやらないですけれども、私、家の中ではかなり緩くて、どこか同じ匂いを巴に感じましたね。あと巴は28歳という設定なので、歳も近くて非常に共感できる部分も多くあって、毎回楽しく演じています。

――なるほど、そんな能登さんのお気に入りのシーンはどこですか?

能登:
やはり巴の素が見られた7話ですね。彼女ぐらいの年代の人たちって、仕事もひと通りのことをやらせてもらい、これから仕事を続けていくうえで、“これからどうしようかな”とひと息つく時期でもあると思うんです。それに結婚や家族の問題も出てくる。そういった悩みや葛藤、そして等身大の女性の気持ちがリアルに描かれていると感じました。
もちろんそのほかにも好きなシーンは沢山あって……緒花ちゃんが新しい環境の中で折り合いがつかず、民子ちゃん菜子ちゃんに「ちゃんと話そうよ!」と本音でぶつかるシーンは、青春だなぁと思いましたし、民子ちゃんが学校で告白されて徹さんのことを言うシーンは、乙女だなって(笑)。それに11話から13話で描かれる四十万の女たちのくだりも好きなシーンですね。

――『花咲くいろは』のテーマのひとつが“お仕事”ですが、能登さんが小さいころなりたかった職業はなんでしょうか。

能登:
幼い頃はお花屋さんとかパン屋さんですね。自分で進路を考えるようになる頃には、看護師さんか福祉関係、あとは子供が好きなので保育士さんになろうと決めていました。でも高校3年生の夏頃に、仲代達也さんの無名塾の舞台を見て「芝居がやりたい!!」と。親には「寝ぼけるな!」と言われましたけど(笑)。

――もともと演技に興味があったのですか?

能登:
はい。演劇が好きで小学生の頃は児童劇団に入っていましたし、中学では演劇部に所属していました。それで何とか親を説得して、専門学校に通うということで、1年だけ東京に行かせてもらえることになったんです。私としては“早く上京して早く卒業して早く芝居をやりたい”という感じでした。それから今の事務所とご縁があって、声優という声のお仕事をすることになったんです。親は1年経てば帰ってくるだろうと思っていたみたいですが(笑)。今はメインである声のお仕事のほかに、朗読会をやったり、舞台のお仕事をいただけたら少しずつですが挑戦したりしています。

――声優というお仕事に就く前に、アルバイトなどはされていましたか?

能登:
アルバイトはいろいろしましたね。ファーストフード店の店員さんやチラシ貼りもやりましたし、金沢駅の近くにある安産の神社で巫女さんもやりました(笑)。働くことが好きだったんです。一番長く続けたのは、写真家さんの事務所かな。あと民宿で食事の準備や布団の上げ下ろしをする仲居さんのお手伝いもやりました。東京に来てからは、割烹料理屋さんで仲居さんのような着物を着て、お座敷についてお食事を出すアルバイトもしましたね。

――飲食業の経験が豊富ということは、普段から料理を作ることも多いのですか?

能登:
実は今までやってこなくて(笑)。本当に気が向いたときに作っていた程度で、それこそ若い頃は食べるの専門でした。でも女子としてどうなんだろうと思い、悔い改めて、最近は作るようになりました。

――なるほど(笑)。では話を戻して、声優というお仕事をされていて、難しいと感じる部分はどこでしょうか。

能登:
毎日が難しいです。アニメーションは声でのお芝居ですが、本当に果てがなくて。こうかなと思って演技していても、新しいことや気付くことが無数にある。「本当に私ってバカ!!」と思うことも結構あります(笑)。

――声優さんはいろいろな役を演じられますが、スケジュールによっては1日で何役も切り替えなくてはならないですよね。

能登:
もしひとりでアフレコをしていたら難しいかもしれません。他の共演者さんやスタッフさんなど、皆さんと一緒にお仕事させていただいているからこそ出来る部分も大きいですね。不思議なもので、スタジオなどの現場、その空間に行くと自然と切り替えられるんです。もちろん、すごくシリアスだったり繊細な心理描写がある重たい話、それこそ自分が全部持っていかれてしまうような役のあとに、別のお仕事があるとリセットするのには少し時間がかかりますが、でもやっぱり現場で皆さんの声を聞くと自然と、その現場の流れに入れるんですよね。

――大変なお仕事の後、どうやって気分転換されますか?

能登:
そのときそのときで違ったりするんですが……少し前は時間ができたら日帰り旅行に行っていました。鎌倉とか高尾山とか。あとは行き先を決めないで、とりあえずこの電車に乗って、全然知らない駅で降りて街を散策したりとかしていましたね。時間がないときは体操やストレッチ、マッサージなどをしています。自分の体を使ってないと感じることが多くて(笑)。体を動かすとリフレッシュできますね。あと掃除や家事も気分転換になります。

――作品の舞台となる金沢は能登さんの地元ですが、能登さんのオススメの場所はどこでしょうか?

能登:
メジャーなのは兼六園や21世紀美術館なのですが、個人的には卯辰山(うたつやま)です。金沢には犀川と浅野川という大きな川が流れていて、それぞれ男川、女川と呼ばれる風情のある川なんですが、その浅野川の上にあるのが卯辰山。川沿いに桜があったり、特に山からの夜景が綺麗で好きですね。あとは人がいなくなった廃寺もけっこうあって、高校時代は、そういった所を巡るのが好きでした(笑)。

――『花咲くいろは』は能登さんにとってどんな作品でしょうか?

能登:
いろいろなことを考えさせてもらえる作品であり、初心を思いださせてくれる作品です。緒花ちゃんたちからは、仕事に対しての必死さやひたむきさ、がむしゃらさが伝わってきますし、巴やスイさんたちには、仕事に対しての気持ちや仕事とは何かということを考えさせられる。演じていても、本当にハッとさせられます。
また『花咲くいろは』は特になんですが、地元を舞台にした作品に出させてもらえたことで、地元の情報誌や新聞紙に取り上げていただき、いろいろな方から応援していただいています。もちろん今までも多くの方に応援していただいていたのですが、地元だということで、今まで以上に取り上げていただいて。地元ってなんて温かいんだろう、自分がそれまで過ごしてきた場所は、こんなにも大切な場所だったんだと初めて感じることができました。
それまでは地元があるというのは、どこか当たり前のように思っていたんです。でも、私自身にしみ込んだものや、その地で生まれ育ったという特別感が、こんなにもあるんだなと、あらめて地元との繋がりを考えさせてもらいました。
それに対して私も間接的でもいいのでお役に立てればと思っていますし、応援してくださった方たちにも何かお返ししたいです。

――それでは最後に、ファンの方へメッセージをお願いします。

能登:
まずは沢山の方に見てもらって、『花咲くいろは』の魅力に触れてもらいたいです。この作品から感じるものは、皆さんの年齢や性別、状況によって違うと思うんです。それは別の言い方をすると、登場人物それぞれにドラマが沢山詰まっていて、見る方の立場が違っても、どのキャラクターにも感情移入できる、楽しみ方がいろいろあるのかなって。でも一番は何よりも作品を楽しんでもらうことですね。少しでも面白いと思ってもらえるよう頑張りますので、皆さんも『花咲くいろは』から沢山のものを受け取っていただければと思います。