インタビュー花咲くいろは

花咲くいろはスペシャルインタビュー第22回

――押水菜子を演じられて、ご自身と似ていると思われるところはありますか?

豊崎:
大きくふたつあるんですが、ひとつは性格。菜子は引っ込み思案で人見知りで大人しくて……どちらかと言えば友達や周りの人に流されるタイプなんですが、私もそれに近い部分があるんです。友達に「何を食べに行こうか?」と聞かれてもみんなにまかせてしまったり、遊びに行くのでも周りと合わせることが多くて。そういう部分は近いかなって思います。
もうひとつはこの仕事に就くことになった理由です。菜子は人見知りな自分を変えたいと、仲居さんの仕事を始めたのですが、私が声優になったのも同じような気持ちがきっかけなんですよ。ちょうど菜子と同じぐらいの年齢のとき、自分の声があまり好きではなくて。でもそういう自分を変えたいと思っていたんです。そのとき、たまたまバラエティ番組(テレビ)のリポーターのお仕事ができることになって、思い切ってチャレンジしてみようと。

――そのとき不安は……。

豊崎:
もちろんありました。でも今は思い切って飛び込んでみてよかったとすごく思います。そのお仕事で、何かを伝えることや番組を作ることの楽しさを知りましたし、性格も前に比べると明るくなったと思います。それに、そのお仕事がターニングポイントになって、今に繋がっているんです。だから自分を変えたいと思って新しいことを始めた菜子の気持ちはすごく分かりますね。

――小さい頃からそういった職業に憧れていたのですか?

豊崎:
そんなことはなくて、幼稚園の日記にはフライトアテンダントになりたいと書いてありました。知り合いにフライトアテンダントのお仕事をしている方がいたんですが、その人を見て、バリバリ働く女性はカッコイイと思っていたんです。あと小学校高学年になるまで飛行機に乗ったことがなくて、飛行機に乗る仕事にものすごい憧れていたというのもありますね。中学時代はバスケットボール部で、部活ひと筋という感じでした。あ、こう見えて走るのも早くて陸上部でもないのに、市の陸行競技大会の学校選抜に選ばれたりもしたんですよ。今は誰も信じてくれないですけれども(笑)。

――アルバイトの経験は?

豊崎:
いろいろやりました。音楽が好きなのでライブスタッフをやったり、ベルトコンベアで流れてくるオモチャの検品をしていたこともあります。飲食業も経験しましたが、アルバイトが終わってからの疲れが半端ではなくて、あまり長続きしなかったです(笑)。あとは、英語がしゃべれないのに海外の方が多く訪れる美術館の受付をやってみたり、パン屋さんでパンを焼いていたり……、一番長くやっていたのは、本やCDを売っているお店の店員ですね。

――なるほど。それでは『花咲くいろは』についてですが、これまでのシーンで印象に残っているのはどこでしょうか?

豊崎:
沢山あるのですが、今まで放送されたシーンの中であげれば、菜子が泳ぐシーンかな。普段は周りに流される女の子なのに、泳ぐことになると積極的になる。菜子の水泳は趣味以上の執着があるようにも思えますが(笑)、夢中になれるものがあるっていいですよね。
あとは緒花ちゃんに対するセリフ。菜子って意外と毒舌家というか、特に緒花ちゃんに対して時々ひどいことを言いますよね。でも緒花ちゃんだからそういうことを言えるのかなって。普段であれば考えて考えて気を使って言葉を紡いでいるし、それがあるから声が小さくもなってしまうと思うんです。でも一緒に仕事をするようになって打ち解けてきてからは、緒花ちゃんに対して自分の思ったことを素直に口にしているんだと思います。それは心を許せる友達だからなんだなと思えて、私は嬉しかったですね。緒花ちゃんは悲しい気持ちになってましたけど。

――セリフと言えば、4話の民子をあだ名で初めて呼ぶときのエピソードで、「ひき肉的な…」というのも印象的でした。

豊崎:
あそこは菜子の中でもかなりのギャグシーンですよね。あのセリフがあったおかげで、その後の菜子のキャラクターの幅が広がったと思います。もともと緒花ちゃんたちと比べて言葉で感情を現わすことが少ないので、モノローグなどのシーンは大切にしたいと思っていました。その中で人間らしい部分、親近感が沸くような演技ができればいいなと。どういう声を出せれば、どう演技すれば皆さんに愛されるキャラクターになるだろうと常に試行錯誤しながら演じています。

――『花咲くいろは』の舞台となっている金沢で、行ってみたい場所などはありますか?

豊崎:
今、金沢のいろいろな場所に張られているポスターがあるのですが、菜子は兼六園をバックにお団子を食べているんですよ。それと同じことをしてみたいです。あと金沢には美術館や小さな古美術店が沢山あると、能登さん(巴役・能登麻美子)に教えてもらったので、そういうところを見て回りたいですね。街も綺麗だし散策するだけでも楽しそう♪

――では、もし温泉宿を経営するとしたら、どんな宿にしてみたいですか?

豊崎:
喜翆荘よりは小さくてもいいので、のんびりできる、それこそ家と同じぐらいリラックスできるような温泉宿がいいな。あと喜翆荘には、お客さんひとりひとりについて嫌いな食べ物や起床時間などを記した細かい覚書があるのですが、そういうのはぜひ取り入れたいです。それって人として招かれている感じがとてもするって思いませんか? 旅館を経営することはないと思いますけれども、細かい心配りってとても大切だし、そういうところを守りたいなと思います。大きくなくていいから、温かい、優しい旅館にしたいですね。

――温泉と言えばリフレッシュを想像しますが、豊崎さんの気分転換方法は?

豊崎:
気分を変えたいと思うときはマッサージに行っていますね。あとは時間があれば寝るようにしています。短い時間でも寝ると頭がスッキリするんですよ。それから最近はアロマですね。知り合いの方にラベンダーがベースのアロマスプレーをいただいたのですが、その香りがとても気に入って、それからアロマの小瓶を持ち歩いています。気分転換をしたいときにシュって。頭がスッキリするんですよ。

――豊崎さんにとって、『花咲くいろは』どんな作品ですか?

豊崎:
いろいろと教えてもらったり、気付かせてくれたりすることが多い作品ですね。特に緒花ちゃんからは沢山教えてもらっています。緒花ちゃんは、いきなり周りが大人の中、――菜子もみんちも旅館で働いていますから、そういう意味では大人だと思うんです――唯一子供のままで喜翆荘にやって来た子で、新しい風でもある。それが良くも悪くも大切なことをシンプルにセリフの中で言ってくれる。収録をしていても、ハッとすることもあるんです。
あとは菜子と一緒にいろいろと悩んで成長していければと思っています。やっぱり菜子も私もまだまだいろいろと覚えることが沢山ある。でも『花咲くいろは』の収録が終わったあと、少しずつですが、自分が成長できてるかなって感じるときもあるんです。すべての収録が終わったとき、菜子と一緒に私も成長できたらいいなと思います。

――それでは最後に、ファンの方へメッセージをお願いします。

豊崎:
毎回収録現場には、喜翆荘のキャラクターがそのまま来たような温かさがあるんです。そんな楽しい方たちとすごい愛のある作品を作れているなと感じています。そして私たちも菜子や緒花ちゃん、みんちたちが毎回どうなるか楽しみにしていて、その気持ちは皆さんと同じなので、最後まで『花咲くいろは』を見守ってくださると嬉しいです。